私には相当な鳥肌小説でした。
刃物みたいなユーモアと脱水して半乾きしたようなドライさ。使われる単語は強烈ですが、毒々しさがなく、気持ちが良い文章を書かれる方ですね。とても好きです。
まず、不器用でモゴモゴした学生時代が、私とダダ被りして鼻の奥がツンとしました。田舎者特有の立ち回れない感に、グッときました。実話であろうとなかろうと、うまくいかなかった傷は残れど書きながらかさぶたをつくるような回復感や、ユーモアに差し替える強さが伝わってきました。
絶対に、タイトルは変えずに発売してください!!読み終わったら、口に出して言えない恥ずかしさなんて吹き飛びました。「逆に聞こう、何が悪い?」という気分です。
ページが進むにつれ何度も、「ふつう」という言葉の残酷さに寒気がしました。ちっとも思うとおりいかない・理解出来 ない「ふつう」と対峙する「私」。
規格外の野菜みたいに、形の良い幸せでなければ、幸せと呼んではいけないのだろうか?静かな声で問われいるような文章に、泣きそうな感情が吸われていく。
愛する人と何処かで繋がっていたい。そんな思いを消化 するまで、幾度も心と身体とが、血を流していく。生々しさと、不完全さと優しさと、葛藤の「私の20年」。
最後のページに行き着いたとき、日々軽々しく「希望」を口にする自分を恥じて 涙が出ました。
鳥取県 女性書店員Oさん
数行では表せない位、笑って泣いて引き込まれました。
ありきたりな言葉になってしまいますが、本当に感動しました。読む前にご本人のブログをちらっとチェックしていたので、題名ほどライトな内容では無いだろうと予想していましたが…想像以上にヘビーでした。
悲惨で不幸なエピソードのオンパレードなのに、不意打ちの様に自虐的なユーモアを差し挟んでくるので(no problemとか…。笑ってしまいました)身勝手な自分語りにならず、ちゃんと「読ませる力」のある本になっていると思いました。
特に、終わらせ方が素晴らしかったです。単純に笑いの“オチ”としても機能していて、 “普通”側の人間、それが正しいのだと言わんばかりの人たちへの決意表明の様にも思えて、 素晴らしい締め方だと思いました。
てゆうか最終ページは本当に涙なしには読めません…(号泣)
性的な事だけではなく、 世の中の“普通”の物差しから外れて苦しんで いる人、疎外感を感じている人に「この本読んでみなよ」と配り歩きたい気分です。私もそういう人達の一人なので、 人並みに“普通に”生きられない自分を肯定してもらえたような気がしました。
紀伊國屋書店 佐貫聡美さん
「夫のちんぽが入らない」読みました。すごいものを読ませてもらいました。
好きな人がいて、その人も自分のことが好きであるのに、セックスができない。その一点で世界は他の何が満ちていても暗く閉ざされてしまう。それでも生きていかないといけないし、「できない」という闇でさえいずれ慣れてしまっていく。 人間の強さと悲しみと生きていく上での業がすべて詰まった物語だと思いました。
個人的にはこだまさんが休職しているときに突然ミユキが訪ねてきて中学の合宿所まで連れてってほしい、と言われ車で追いつこうとする場面が一番胸を打ちました。
旦那さんの20年もまた違った闇と悲しみと光が満ちているのではないかと想像します。こだまさんから見た描写だと旦那さんが別れの気配を出してる場面がほぼありませんが、二十代前半の頃に「好きな人とできない」というのは耐え難い苦しみだったのではないかと想像します。別れることは考えなかったのか、あるいは考えたけど振り払ったのか。
たがいに別の人と性関係を持っているにもかかわらず、二人からは相手に対してのとめどない愛情を感じます。「兄弟みたい」という言葉は我々が知る範囲でその愛情にもっとも似て(そしてなお遠い)表現なんだろうと思います。
これはいろんな人に読んでもらいたい物語だと思いました。
想像していたよりシビアな状況に、戸惑いながら読んでいたのですが、最後にこんなにも感動があふれてくるとは思いませんでした。ラストのエピソードには思わず涙してしまいました…
この本を読んで、こんなことが本当に起こるんだという驚きと、そうではない自身の夫婦関係がいかに幸せなのかということを思い知ることとなりました。
こだまさんは、お母様との関係が良くなかったばかりに本当に好きになった人「この人との子供を産みたいと深層心理で思ってしまった人」とだけうまく出来なかったのではないかと思いました。(物理的なサイズの問題ももちろんあるのかもしれませんが…)高校時代に初めて関係した人や、インターネットで知り合った「どうでもいい人」とは出来ていたようなので、本当に好きな人とだけ出来ないと言うのが悲しくてしょうがないです…
終始重くて暗めのエピソードが多いですが、こだまさん節というのか、ちょこちょこ笑えるフレーズがはさまるのが印象的で、つい笑ってしまったのですが、それがあることによりもの悲しさが増して切なくなりました。
紀伊國屋書店ららぽーと豊洲店 宮澤紗恵子さん
このそこはかとない、諦念と哀しみ。
だが頬を伝うこの涙は、同情では決してない―――
愛のカタチって変わってゆくものだと思うが、この夫婦の愛のカタチはちんぽが入らないゆえに変わらない。
比喩表現がとてつもなくうまいと思いました。
個人的には社会に出る前のテイストで最後まで突き抜けてほしかったですが、文学史に残る作品だと(色々な意味で)思います。
さわや書店フェザン店 松本大介さん
もう一気に読みました。
正直最初は題名から、きっと最初は夫のちんぽが入らなかったけれど、も夫婦生活の創意工夫で克服して、子どもを授かり、今は幸せな家族です・・・というような ユーモアエッセイかと思って読み始めました。
ところが!「純文学」ではないですか!
やーもうびっくり。
しかも一気に読ませる筆力。
いい作家捕まえましたね。
恭文堂コミッククラフト店 早川博志さん
夫のちんぽが入らない。なぜ、夫のだけ入らない。
こんなに愛しているのに、大事な相手に体を許すことができないという辛さ。
彼女は自分の毒に自分の体を差し出した。体は夫の「ちんぽ」を拒否し、やがて閉経してしまう。しかし、こだまさんはこのことをネガティブばかりに感じていないのだ。この本を通して言いたいのは、「不器用な私、お気の毒」ということではない!自分が納得するまでやってきた、がんばってきたのだから、結果がこれならばと受け入れようとしている。様々な経験を通して、こだまさんの心は偉大なる母のような広がりを持っている。
夜遅くに読み終えた私は、ただただ2人のちんぽが入らない関係性に胸を打たれています。タイトルがとにかく素晴らしいです。この一冊を凝縮したような言葉。とても奥深いタイトルです。
ヴィレッジヴァンガード新京極店 本田さん
一読して、読み易い文章だな、と思いました。個人的にはキミスイよりも読み易かったです。ただ、痛いですね・・・
「渦の中に引きずりこまれたら平常心ではいられない」など、心身のバランスがおかしくなってしまった人の描写がうまいな、と思いました。
子どもを持たない人、子どもを持てない人、の現代の悲哀をあえてユーモラスに言い表した作品だと思います。
メトロ書店 Kさん
ツイッター上でもご紹介いただきました
こだまさんの例の本の、プルーフをいただき、すぐさま読んで衝撃を受けて、最後のページの最後の2行に 渾身の「思い」を見た。
— takakuramie (@takakuramie) 2016年11月8日
誰かの人生をまるごと知らないで「善意」で、いろいろ
ほんとーにいろいろ、言ってくる人がいる。
「その人のためになる」と思って言ってくるから始末が悪い
そして思ったことは、ひとを、ひとの人生を、侮るな。
— takakuramie (@takakuramie) 2016年11月8日
ということだ。
悲しいと言っているひとだけが悲しんでいるわけじゃない。
笑っているひとが、心底笑っているわけではない。
泣いているひとが、悲しんでいるってことでもない
声の大きいひとの言葉だけが、響き渡る空間はいやだ。
と
で、どうしても同居人にこの本を読んで欲しかったので、朗読した。今日、読み終えた。ワタクシも嗚咽をこらえて最後の2行を読み、同居人は号泣。そんな。そんな物語。https://5023w.roads-uae.com/lxj5bZh83C
— takakuramie (@takakuramie) 2016年11月8日
元書店員、現ライター&漫画家 高倉美恵さん
昨日受け取りまして先程一気に読み終えました。
読み終わった直後、「うわー……」という言葉が自然と口から漏れて
それまで堪えていた涙がほろりほろりと、流れ落ちました。
著者であるこだまさんと、状況は違えど自身の状態が被るところが正直何点かあり、情けないことに読み進めるうちに、胃がキリキリと痛み胸が苦しくなり……それでも、途中で本を閉じる事はとてもできませんでした。どうしても、できませんでした。
幼い頃から常に自分に自信がなく、自分なんかがこうやってここに存在していていいのだろうかという葛藤。常に母の顔色をうかがってしまうところ。自分でなんでも解決しようとして、最終的に体が弱るまで自身を追い込んでしまうところ。生き続けていていいのかと悩み続けてみたり、時には前向きに自分の人生と向き合う心を持ち、大切な人を思うこと、守ること、そして自分自身を守るための行動を、逃げる事と感じてしまうところ……。全部全部、私とこだまさんとの共通点だとおこがましくも感じつつ、読み進めていきました。
そしてなによりも、ああ、この人も沢山沢山周りの目を気にしながら、沢山沢山戦いながら、それでも自分の事を価値のない人間だと思い続けてきたのだな、と。
どれだけ辛く苦しい中で、周りの声や目を気にしながら、自分を押し殺して生きてきたのだろうと考えたら、ぎゅーっと胸が締め付けられて、目の前にこだまさんがいらしたら、抱きしめてあげたいと、年下の分際ながらもついつい思ってしまいました。
当たり前のことが、突然できなくなる。これほど辛いことはありません。そして、周りの人は当たり前にできることが自分には一生できないのだという絶望感も、どんなことであれ、味わった人にしかわからないことでしょう。
私事になりますが、もうかれこれ15年近くとある持病と生きております。こだまさんのように、免疫性の疾患ではありませんが「線維筋痛症」という全身のどこかに激痛が常におこり続ける病気にと共に生きています。(続く)
戸田書店静岡本店 金澤恵子さん
こだまさんの「夫のちんぽが入らない」読ませていただきました。
まず何より最初に「変態村」という大好きな映画を思い出しました。
主人公の売れない男性歌手が、移動最中に車が故障、寒村に迷い込みます。
(ここからしばらくずっと『変態村』のあらすじ)
(中略)
ラスト、唯一歌手に追いついたバルテルが底なし沼にはまり
沈みゆきながらも歌手(グロリア)に愛を求めます。
そして歌手が「愛しているよ」と返して物語は終わります。
タイトル、パッケージからはB級ホラーのにおいしかせず、実際途中はシュールかつショッキングかつ芸術的な、「悪魔のいけにえ」的見所も多数でしたが、これはまぎれもない愛の映画でした。
原題は邦題とまったく異なる“calvaire”
これはキリスト教における「受難」を意味する言葉だそうです。
主人公の歌手があらゆる苦行災難試練を通りそれを受け入れる物語。
もちろんこだまさん夫婦のそれがこれだという意味では有りません。一見、ふざけたように見える(実際わらえるところもある)が、その奥にあったのは真摯な叫びであり、純粋なる愛でした。
素晴らしい作品を読ませていただきました。ありがとうございました。
感想の90%が変態村じゃねえか、であることはご容赦ください。
京都府 男性書店員Oさん
“夫のちんぽが入らない”衝撃の実話――彼女の生きてきたその道が物語になる。
2014年5月に開催された「文学フリマ」では、同人誌『なし水』を求める人々が異例の大行列を成し、同書は即完売。その中に収録され、大反響を呼んだのが主婦こだまの自伝『夫のちんぽが入らない』だ。
同じ大学に通う自由奔放な青年と交際を始めた18歳の「私」(こだま)。初めて体を重ねようとしたある夜、事件は起きた。彼の性器が全く入らなかったのだ。その後も二人は「入らない」一方で精神的な結びつきを強くしていき、結婚。しかし「いつか入る」という願いは叶わぬまま、「私」はさらなる悲劇の渦に飲み込まれていく……。
交際してから約20年、「入らない」女性がこれまでの自分と向き合い、ドライかつユーモア溢れる筆致で綴った“愛と堕落”の半生。“衝撃の実話”が大幅加筆修正のうえ、完全版としてついに書籍化!